妙香、甲状腺の病気には気をつけろよ。
ホルモンバランスが崩れると、
巨大化してしまうらしいぜ。
確かに・・・
ホルモンバランスの乱れは怖いね。
正しい生活を心がけなくっちゃ!
甲状腺ホルモンのバランスが崩れると
異常な発育を示すことが我々人間の場合にもあります。
そうです。ここはすべてのバランスが崩れた恐るべき世界なのです。
これからの30分、あなたの目はあなたの身体を離れて、
この不思議な時間の中に入っていくのです。
(ウルトラQ2話オープニングナレーション)
ウルトラQ2話のあらすじ
伊豆・天城山の近くにあるロープウェイで、
大勢の観光客が遊覧を楽しんでいた。
しかし突然、目の前に巨大な猿が出現する。
観光客たちはパニックになって一目散に逃げた。
野猿研究所では下働きの五郎が焼き芋を作っていた。
そこに研究員の小野と松崎が、2カ月ぶりに東京から来た。
松崎は保管庫の青葉くるみがなくなっていることに気づく。
それは甲状腺機能を促進させる特殊な薬だった。
毎日新報の関デスクは巨大猿出現の情報をつかんだ。
彼は特ダネを狙うため、万城目にヘリを飛ばすよう依頼する。
おもな登場人物(敬称略)
万城目淳(佐原健二)
星川航空のパイロット。怪事件に真摯に向き合う好青年。
戸川一平(西條康彦)
万城目の後輩。おっちょこちょいだが、たまに鋭い勘を発揮。
江戸川由利子(桜井浩子)
毎日新報のカメラマン。怪獣を恐れずに写真を撮る。
関デスク(田島義文)
由利子の上司。仕事の鬼だが人情家。
ゲスト出演
小野(土屋嘉男)
野猿研究所の研究員。2ヵ月ぶりに伊豆にやってきた。
松崎(石田茂樹)
小野の同僚。青葉くるみが盗まれたことに気づく。
五郎(鈴木和夫)
言葉が話せない青年。野猿のゴローとは家族のような間柄。
登場怪獣(巨大猿ゴロー)
もともとは天城山中にいる普通の猿で、
猿好きの五郎が可愛がっていた1匹だった。
野猿研究所にあった青葉くるみを大量に食べたせいで、
甲状腺のバランスを崩して巨大化してしまったんだ。
牛乳が好物だがうまく飲めないぞ。
ウルトラQ2話「五郎とゴロー」の感想
野猿研究所のずさんな管理
ウルトラQが放送された1966(昭和41)年は、
太平洋戦争終結から21年しか経ってなかったので、
その影響がまだ残っていました。
ゴローが食べてしまった青葉くるみは、
前線で戦う兵士たちに与える栄養補給剤で、
甲状腺機能を促進させて体力を増強するものでした。
でも、青葉くるみの管理は本当にひどかったです。
野猿研究所の職員2人は現地に常駐しておらず、
「2か月おきに東京から来訪する」という決まりになっていました。
しかも建物は研究所とは名ばかりの粗末な小屋でした。
だからお腹を空かせた野猿のゴローが、
あっさり侵入できたんです。
コンクリートで地下室を作って、
その中に青葉クルミを保管しておけば、
今回の騒動は起こりませんでした。
青葉くるみは軍事利用するものなので、
人目につかない場所にあったほうがいいんでしょうが、
ずさんな管理をするくらいなら、
最初から野猿研究所に置かないでほしかったです。
青葉クルミのせいで何の罪もない野猿が、
人々の生活を脅かす怪獣になってしまいました。
町の平和を守るためにはゴローを倒すしかありません。
しかし、ゴローの命を奪うことになったら、
五郎の心に一生消えない傷が残ってしまいます。
金城哲夫さんが描く「人間の光と影」
半世紀以上続くウルトラシリーズをこの世に送り出したのは、
脚本家の金城哲夫さんでした。
この「五郎とゴロー」は、
テレビ放映された最初の金城シナリオなんですよ。
金城哲夫さんは沖縄の出身です。
幼い時に家族と辛い戦争体験をなさっているので、
彼のシナリオには社会的弱者への優しい目線があります。
言葉が話せない五郎は巨大化したゴローに餌を与えるため、
牛乳や畑の果物を盗んでしまいました。
怒った村の人々は五郎を折檻します。
事情が事情とはいえ、やってはいけないことをしたんですから、
五郎が罰を受けるのは仕方のないことでした。
でも、子供向けのウルトラQで、
社会の暗部を描いたのはキツかったです。
当時の時代背景も相まって、
差別用語もたくさん出てきました。
非常に重苦しいシーンだったので、
視聴をやめようかと思いましたが、
一平のおかげで続きを観ることができました。
誰だっていいじゃないか!
大勢でいじめるなんて、可哀想で見てられないよ!
五郎を助けた彼の優しさに拍手ですね。
五郎とゴローの行く末やいかに?
伊豆でゴローの騒動があった頃、
由利子は南海にあるイーリヤン島で、
残留日本兵について取材をしていました。
実はイーリヤン島の猿たちも、
青葉くるみを食べて巨大化していたんです。
兵士を強くするために開発された青葉くるみが、
猿の好物になってしまうとは皮肉ですね。
イーリヤン島の住民たちは巨大化した猿を恐れるのではなく、
ありがたい存在として大事にしていました。
高い木の上の果物を獲ってくれたり、
重い荷物を運んで働いてくれたからです。
イーリヤン島の状況を知っている由利子は、
「ゴローをそこに移住させれば騒動が収まる」と考えました。
関デスクはこれに賛成します。
君が撮ってきたイーリヤン島の写真が、
僕の心を動かしたんだよ。
いやあ、武器なんかいらん。
心と心だよ。
関デスクはゴローの輸送費用を、
毎日新報で負担すると言いましたが、
会社のイメージアップ戦略のひとつなんでしょうか?
美談の中にシビアな計算が隠されていますね。
しかし、ゴローと自衛隊は一触即発の状況だったので、
毎日新報が動かなければ最悪の事態になっていました。
ゴローだけイーリヤン島に輸送されたのか、
五郎も一緒に付き添ったのか・・・
2人の行く末が分からないまま終わってしまいましたが、
できることなら南の楽園で、
いつまでも幸せに暮らしてほしいです。
ウルトラQ2話の基本情報
本放送日:1966(昭和41)年1月9日
制作順:7
脚本ナンバー:11
脚本担当:金城哲夫
音楽:宮内國郎
番組ナレーション:石坂浩二
登場怪獣、宇宙人:巨大猿ゴロー
特技監督:有川貞昌
監督:円谷一
視聴率:33.4%
最後まで読んでくれて、ありがとな。
またのご訪問をお待ちしています。