ミケさん

原因不明の交通事故が相次いでるよ。
ドライバーは「白い少女」を見たんだとか・・・

あんのん君

それって幽霊なのか?
だが「精神が身体から抜け出した」という噂もある。
少女の正体がなんなのか見極めたいぞ。

みなさん。
これは映画の撮影のために作られた事故ではありません。
我々の日常生活の中で、
今起こりつつあるバランスの崩れたある瞬間なのです。
これから30分、あなたの目はあなたの身体を離れて。
この不思議な時間の中に入っていくのです。

引用元:ウルトラQ25話(オープニングナレーション)

【ウルトラQ】#25「悪魔ッ子」のあらすじ

謎の交通事故が頻発していた。
被害者たちは口々に「白い服を着た少女」を見たと証言する。
さらに彼らは何故か、つまらないものを失くしていた。
万城目たちは一の谷博士を伴って、東洋大魔術団の公演を観ていた。
魔術師の赤沼は娘のリリーと組んで、空中散歩の芸を見せる。
しかし一の谷博士は催眠術をかけすぎると、
シナプスの破壊で精神と肉体の分離がはじまるという。
由利子は「白い服を着た少女」がリリーとは思えなかった。
そんななか、リリーが過労で倒れてしまう。
万城目は催眠術のかけすぎは良くないと赤沼に注意する。

おもな登場人物(敬称略)

万城目淳(佐原健二)
星川航空のパイロット。怪事件に真摯に向き合う好青年。

戸川一平(西條康彦)
万城目の後輩。おっちょこちょいだが、たまに鋭い勘を発揮。

江戸川由利子(桜井浩子)
毎日新報のカメラマン。怪獣を恐れずに写真を撮る。

関デスク(田島義文)
由利子の上司。仕事の鬼だが人情家。

一の谷博士(江川宇礼雄)
世界的権威の学者。万城目たちの良きアドバイザー。

ゲスト出演

赤沼(小杉義男)
東洋大魔術団の魔術師。夜な夜なリリーに催眠術をかける。

登場キャラクター(リリー)

身長:120センチ程度
体重:不明
出身地:不明
演者:坂部紀子

【ウルトラQ】#25「悪魔ッ子」の感想

この話は閲覧注意です。

人間の負の部分は誰にもあるものですし、
無垢な子供が闇落ちするというのが怖いんですよ。

でも、リリーは気の毒でした。

毎日のように空中歩行の舞台に立たされ、
「特殊体質だから寝付けない」という理由で、
父親に催眠術をかけられていたんですよ。

しかもリリーが寝かされていたのは魔術団の楽屋で、
彼女専用のベッドもありませんでした。

これでは特殊体質でなくても眠れないでしょう。

リリーはこんな生活をしていたせいで、
人体電気のバランスがおかしくなってしまいました。

人間、誰しも僅かながら電気が流れているんだ。
通常、30ないし50ミリボルト程度に過ぎんがね。
もっとも1万人にひとりくらいの割合で、
かなり高いボルト数を持った特殊な人間もいるそうだ。

引用元:ウルトラQ25話(一の谷博士のセリフ)

人間の身体に電気が流れてるなんて、
ちょっとビックリな話ですが、
これがあるからいろんな行動ができるんです。

そのバランスが著しく崩れてしまうと、
シナプス(脳に情報を伝達するための組織)に、
悪影響を与えてしまうといいます。

ひどい場合は精神と肉体が分離してしまうんです。

そしてリリーの人体電気は、
普通の人より高いボルト数を持っていました。

いちばんの問題は愛情不足

リリーが悪魔ッ子になってしまったのは、
人体電気のバランスが崩れただけではないでしょう。

父親は芸で人気を取ることしか考えてないですし、
そもそも母親が山にいるということ自体がおかしいです。

おそらくすでに故人なんでしょうね。

リリーにとっての悲劇は、
普通の家庭に育っていないことです。

当然彼女は愛情飢餓になっていたので、
他人から「つまならないもの」を奪うことで、
心の安定を得ていました。

  • 翡翠のペンダント(曲芸師の珍から)
  • 懐中電灯(警備員から)
  • サルの人形(トラック運転手から)
  • 結婚指輪(毎日新報の杉本カメラマンから)

「つまらないもの」だけでなく、
かなり高価なものもあるんですが、
心のすきまを埋めたい一心で、
まったく関係ない人の所持品まで奪ったんです。

とはいえ、心の奥底に罪悪感があったので、
精神のリリーは肉体を消滅させようとします。

彼女は蒸気機関車が向かってくる線路を歩いていたので、
最悪の事態になるかと思いました。

しかし、一の谷博士の開発した超短波ジアテルミーのおかげで、
心身のバランスがもとに戻りました。

万城目が素敵だった

実はこの話、万城目がずっとスーツ姿でした。
いつもは星川航空の作業服姿なので嬉しかったです。

彼は線路を歩いているリリーを、
危険をかえりみずに助け出しました。

それが最高にカッコよかったんですよ。

万城目がリリーを助けるクライマックスシーンは、
テストなしの「一発撮り」だったそうですが、

演じたお2人の勇気に感動しました。

人体電気のバランスが戻ったリリーには、
芸の道ではなく普通の暮らしをしてほしいですね。

ただ、覚えていないとは言うものの、
やったことがやったことなので、
きちんと罪を償ってほしいと思いました。

リリーは悪魔ッ子ではなかったのです。
もし悪魔がいたとすれば、
それはリリーの中にではなくて、
それを取り巻く世界が歪んでいたからなのです。
ごらんなさい。
リリーはすっかり明るさを取り戻し、
舞台に無邪気な笑いを振りまいています。

引用元:ウルトラQ25話(エンディングナレーション)

【ウルトラQ】#25「悪魔ッ子」の情報

本放送日:1966(昭和41)年6月19日
制作順:3
脚本ナンバー:3
脚本担当:北沢杏子(原案・熊谷健)
音楽:宮内國郎
番組ナレーション:石坂浩二
特技監督:川上景司
監督:梶田興治
視聴率:31.5%

ミケさん

最後まで読んでくれて、ありがとう。

あんのん君

またの来訪を待っているぞ。