妙香、火星から地球に贈り物が届いたぞ。
わざわざ気を遣ってくれるとはありがたいな。
ちょっと引っかかるな。
正式な贈り物ならロケットに搭載するんじゃなくて、
火星人が人類に手渡しするはず。
何か企みがあるかも・・・?
のどかな平和な歌声を破って、
それは地球に到達した。
そして、それは我々に何をもたらすであろうか。
これから30分。あなたの目はあなたの体を離れて、
この不思議な時間の中に入っていくのです。
(ウルトラQ3話オープニングナレーション)
ウルトラQ3話のあらすじ
万城目と由利子はヘリに乗って海を見ていた。
のどかな時間なので由利子は歌いはじめる。
すると上空から奇妙なパラシュートが落ちてきた。
パラシュートの正体は、地球が打ち上げた火星探査ロケットだった。
一の谷博士は何者かが送り返したと推測する。
その火星探査ロケットの中には「金色の玉」が2個入っていた。
学者たちは「火星からの友好の印」といって喜ぶが、
ギャングによって「金色の玉」は盗まれてしまった。
大倉山のアジトに着いたギャングは、
洞窟の池から現れた怪獣の光線で命を落とす。
おもな登場人物(敬称略)
万城目淳(佐原健二)
星川航空のパイロット。怪事件に真摯に向き合う好青年。
戸川一平(西條康彦)
万城目の後輩。おっちょこちょいだが、たまに鋭い勘を発揮。
江戸川由利子(桜井浩子)
毎日新報のカメラマン。怪獣を恐れずに写真を撮る。
関デスク(田島義文)
由利子の上司。仕事の鬼だが人情家。
一の谷博士(江川宇礼雄)
世界的権威の学者。万城目たちの良きアドバイザー。
登場怪獣(火星怪獣ナメゴン)
ウルトラシリーズ初の宇宙怪獣だ。
火星人が地球への警告のために利用したぞ。
小さな卵は金色で可愛かったから、
最初は友好の印だと思われた。
武器は大きな目玉から発射する硬直光線だ。
ウルトラQ3話「宇宙からの贈りもの」の感想
米ソの宇宙開発競争
1960年代はアメリカとソビエトの冷戦があり、
双方とも国の覇権をかけて熾烈な宇宙開発競争を行っていました。
ソビエトは1957年に、
史上初となる人工衛星のスプートニク1号を打ち上げ、
1961年には有人宇宙飛行に成功します。
ユーリー・ガガーリンの『地球は青かった』という名言を、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
アメリカはこれに対抗してアポロ計画を立ち上げます。
ジョン・F・ケネディ大統領が、
「アメリカは10年以内に月へ人類を送る」と演説したんですよ。
こういった時代背景があったので、
火星からの警告というテーマは興味深かったです。
人類が積極的に宇宙開発する目的は、
いつか地球以外の居住可能な惑星に、
引っ越さなければならない事情があるからでしょう。
火星探査は迷惑行為だった?
火星人は勝手に探査ロケットを送り込まれたことを、
大宇宙のルールに反すると考え、
警告のためにナメゴンの卵を人類に贈りました。
その気持ちはわかります。
いきなりよその人に自宅に侵入されたら、
警戒するのは当然ですよね。
でも、きちんとした対話ではなく、
いきなり生物兵器を送りこむのが、正しいやり方なのでしょうか。
人類は悪気があって宇宙開発をしたわけじゃないですし、
大宇宙のルールを教えてくれたら、理解して従うこともできます。
だから一平は「俺たちも大宇宙の仲間入りをしよう」と、
コーヒーを淹れている由利子に言いました。
でも、由利子の答えはNOだったんです。
たぶんダメね。
「資格なし」って言われるわ。
戦争したり人種差別をしたり、
ひどい所ではまだ人身売買だって行われているのよ。
もっともっと地球そのものが平等で平和にならなければ。
由利子の言葉に納得です。
人類が内戦や理不尽な差別をやめない限り、
大宇宙連合に加盟することは難しいんですよ。
火星人が海水にあっさり溶けるナメゴンを送りこんだのは、
ただの脅しに過ぎませんでした。
しかし、人類が良い方向に進化せず、
火星にとって本当に脅威な存在になった時は、
もっと強い怪獣を送りこみますよ。
2匹目のナメゴンはおそらく、
万城目と一の谷博士の協力で撃退できたでしょう。
とはいえ、ちょっと心配な終わり方でした。
無限にある海水が、
このドラマを締めくくってくれるに違いない。
だが、地球上での政治的実権を握るための、
宇宙開発の競争が行われる限り、
第2の「宇宙からの贈りもの」が届くに違いない。
それは、たぶん海水を飲んでますます巨大になり、
強靱になる恐るべき怪物に違いない。
(ウルトラQ3話エンディングナレーション)
ウルトラQ3話の基本情報
本放送日:1966(昭和41)年1月16日
制作順:5
脚本ナンバー:5
脚本担当:金城哲夫
音楽:宮内國郎
番組ナレーション:石坂浩二
登場怪獣、宇宙人:火星怪獣ナメゴン
特技監督: 川上景司
監督:円谷一
視聴率:34.2%
最後まで読んでくれて、ありがとな。
またのご訪問をお待ちしています。